『うたごえ新聞』は全国のうたごえ活動や専門家による音楽情勢など最新の文化情報を毎週伝えてくれます。東日本大震災被災地への支援についても、うたや太鼓を通じて全国的な募金の展開、街頭宣伝、避難所コンサート、被災地での激励コンサート等、その輪が広がってきていますが、その模様を逐次私たちに「見せて」くれるのです。
それは単に「事実のレポート」ではなく、その中に介在する人間ドラマや社会情勢など、「時代をレポート」してくれる、読者は居ながらにして全国的な文化・音楽・運動の情勢がわかる「魔法の新聞」なのです。何が魔法なのかは、他に二つの事柄に因(よ)っています。
①は季刊「日本のうたごえ」の編集も兼ねながら少数の編集部体制で日夜奮闘し、クォリティーを落とさないどころか全国数多(あまた)ある機関紙の全国コンクールで最優秀賞をはじめ、優秀賞を何回も受賞しているという金字塔を打ち建てて発行していること。
②は昨年、全国的な拡大運動が展開された中で過去の最高部数にまで肉薄した成果があったもののそこからの減紙が続いていること。一旦前進した中での後退は、従来にまして大きな打撃となるものです。
以上、①②の苦境の下で困難に打ち克ち業績を更新し続けていること、そこに「魔法」を見い出せるのです。しかし、今日この基盤が大きく揺らいでいるのです。蓄積してきた読者の財産が生活防衛型家計時代の蔓延とともに少しずつ切り崩されていくという傾向です。このまま推移するならばこれまで積み上げてきた成果(月1回のカラー化等)の後退を余儀なくされる事態を迎えかねません。
創刊以来55年、今や、うたごえ新聞は「運動の機関紙」にとどまらず読者の幅を広げることによって音楽文化のジャーナリズムの役割も担った日本の音楽界が誇れる新聞です。
今後、読者を増やすために、創造・組織面でよく言われる「広める」ことと「高める」ことの大切さに加えて「深める」ことの実践が重要と考えます。
具体的には4つのビジョン、
- 加盟構成員は全員読者に。一部にある「新入団員にまで読んでもらうのは早い」という対応が、本人も自覚していない無限の可能性をどれだけ空虚にしてしまうことか。先ずは知らせることが第一。
- 運動外に大きく広がっている太鼓など郷土芸能仲間への訴え
- 合唱発表会参加団体への加盟と購読の働きかけ
- サークルの総合的な結びつきを活かした総当たり作戦を
これらの成果は、読者増にとどまらず、運動の構造的・飛躍的な質の変革を用意するものと確信いたします。サークルの大小に関らず、ビジョンの有無がサークルの活力と魅力のメンテンスにつながるのです。今こそ全読者のみなさんに訴えます。お力をお貸しください。
本紙読者拡大本部長
田中嘉治 |