音楽で伝えるということ

混声合唱組曲「こわしてはいけない-無言館をうたう」長野初演

長野県・上田市の美術館「無言館」の館主・窪島誠一郎さん

長野県・上田市の美術館「無言館」の館主・窪島誠一郎さん

20160815-01Flyer9月25日、長野・上田にある戦没画学生慰霊美術館無言館が、来年開館20周年を迎える記念事業の一環として、館主窪島誠一郎さん作詩、池辺晋一郎さん作曲で混声合唱組曲「こわしてはいけない-無言館をうたう」の長野初演を取材。 長野初演とは、この組曲は無言館のある地元長野のうたごえ協議会と池辺さんへの委嘱作品も多い神戸市役所センター合唱団の共同委嘱によるもので、つづいて11月6日、神戸でも初演されることから。
この組曲については5月にも窪島さんに取材していて、作品にこめた思いは聞いていたが、神戸からもかけつけた総勢204人の合唱、ほぼ満席に近い会場サントミューゼ1300人の聴衆の中での演奏は当然ながら熱く、心揺さぶられた。
全6楽章からなる組曲、1曲1曲深いメッセージを伝えるが、最終楽章の、〽今ここに生きている 人間 ぜんぶ 抱きしめよう…、このフレーズの響きが今も私の中で鳴っている。
「今 ここに生きている 人間 ぜんぶ 抱きしめよう」、全6章をこの一行に凝縮されているように思う。描き続けたい、歌い続けたい、生き続けたい思いを断たれた画学生の無念、そして「それは過去のことか」と今を問い、大切なものをこわしてはいけないものをまもるのだ、と心に刻みこみ彷彿とさせる。

池辺さんが演奏前の鼎談で、そして常に話されている「音楽ですること」の意味。窪島さんが紡ぎ出す、絞り出すと言った方がフイッとするほどのことばとの対峙、格闘。その詩に向き合い、「行間、詩の裏側を読み取る、感じ取る」(池辺)、詩と音楽の両方の力でもう一つの大きな世界を創りあげる。
昔、作曲家芥川也寸志さんに取材した時、芥川さんが言われた「風車-完成度が高い詩に、音楽で別の力を加え、その両氏が起こす風が風車のようにまわる時、すばらしい合唱曲が生まれる-」を思い出した。そして、芥川さんはこうも言われた。「そこに聴衆がもう一つの力を加えるのです」。

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