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寺嶋陸也「一本の木」
作詩:紫野京子

75年前、みんなで集まって歌を歌う、ということがどういう意味をもったのか、直接知ることはできず想像するしかありませんが、おそらくは今のようにあらゆる情報や娯楽が溢れている時代とは違った広さや深さ、そして切実さも感じられていたのではないかと思います。
そして今、集まって歌うことがむずかしい世の中が2年も続き、歌うことの大切さにあらためて気づいた人も多いに違いありません。
75年間にわたるうたごえ運動の目的は達成されてきたのでしょうか。
目的、といってもそれは一つだけのことではなく、部分的には達成されたこともあるには違いありません。
しかし、ひとつの目的が達成されても、時代は次々と新たな課題を投げかけてきて、運動は止まることなく続いてゆく。
今までの75年はそうした75年であり、これからの75年もそうであるのでしょう。
じっと立つ一本の木に爛漫の花が咲き乱れる世の中はまだ遠いのかも知れませんが、いつかそうなることを望み続けていたいと思います。

【音源】2022年4月10日シンポジウムにて
ピアノ 寺嶋陸也
演奏 三多摩青年合唱団、絹の道合唱団