■オリジナルコンサート総評
誰もが創り手に

映像による5曲を含め、40曲の発表があった。愛知県が6曲で最も多く、5曲の大阪府が続き、北海道、宮城県、東京都、京都府、広島県が3曲ずつ発表した。5曲に1曲の割合で推薦されることを踏まえれば、これらの曲は、既に沢山の創作曲の中から選ばれてきているわけだが、全体的にレベルが上がっている。
 今回、初めて講評をお願いしたのは北海道在住のお二人。函館トロイカ合唱団のピアノでも参加している作曲家・ピアニストの作道幸枝さんは、「これだけ沢山の創作曲を聴くのは初めてで楽しかった」、岩見沢合唱団こぶし団員・詩人の細野悦子さんは、「今すぐにでも街頭に出て歌いたい曲もあった」。作家で詩人の寮美千子さんは、「カジノや保育の問題など社会的な主張がしっかりしていて、力を合わせて曲が出来てきたと感じた」、作曲家の武義和さんは「底辺のレベルが上がった一方で、愛知、福井、北海道など創作が盛んな地域の花が開いてきている」、福井センター合唱団の齋藤清巳さんも、「愛知は藤村記一郎さんの作風が、宮城は小林康浩さんの影が地域に影響を与えて、レベルが上がってきている」と語っている。
 75周年の運動にふさわしく、何十年と歌い続けている人の参加も。祖父母の視点から孫を歌った作品、仲間を見送った作品もあった。そうした中で、子どもや動物の目線で綴った詩が印象に残る。
 ロシアによるウクライナ侵攻は今も続いている。今年は市民の生活に引きつけた視点での表現が見られた。原発事故による汚染水の海洋放出は祭典期間中に開始されてしまったが、今回、「ふくしま」をテーマにした作品がなかったのは残念。いわゆる「替え歌」に関して、歌詞の創作として推薦を受け付けるが、原作者・作曲者との著作権の関係に留意が必要と確認した。
 オリジナルコンサートは、後日映像配信が実施される。演奏順に編集されたソングブックを手に視聴すれば、誰もが創り手となれる。

木村 泉



今年も全国から集まった40曲の新作を聴かせていただき、ありがとうございました。創られた歌にはそれぞれに作者の願いや祈り、そしていのちが込められていて、何度も心を震わせながら聴きました。もうそれで十分な気もするのですが、次作に向けてのさらなる一歩のための一助となればと思い、感想を一言お伝えしようと思います。私は主にメロディのこと、和音(コード)のこと、楽譜の作り方などを中心に記します。
多くの歌に共通のテーマがありますので、それは作曲の簡単な音楽理論1→(略して作理1・作理2、、)と記しました。したがって番号の若い歌のほうが長めの感想になりますが、後ろの曲の作者も、それを参考になさってください。
なお、全体を通して言えることで、毎年のオリコンの課題でもありますが、作品の良さに演奏がついて行けないケースが少なくない気がします。それぞれの事情もありますが、どんな素晴らしい脚本でも、演じる俳優が下手では良い作品にはなりません。コンサートとしての質を高めることも、今後の課題にしてください。

武 義和



オリコン人気曲
【3票以上】
もう一人行進曲◎
GRANDMA'S LULLABY◎(但し、短縮版)
ばっちゃは私の応援団長◎
歌っているときゃ青年
風の列車◎
明かされる秘密

【2票】
オラトリオ 花は見ていた
はばたけU150
かげおくり
轟壕の子守歌
パタカラソング◎
あなたと一緒に◎
マイペース★マイペース
こんにちはブギウギ
ここに花咲く図書館◎

(注)
◎印 うた新掲載済み

講評委員
木村 泉(山形センター合唱団副団長)
武 義和(作曲家)
作道 幸枝(作曲家・ピアニスト)
細野 悦子(詩人)
高畠 賢(北海道合唱団団長)
寮 美千子(作家・詩人)
斉藤 清巳(福井センター合唱団指揮者)