1.    うた草(京都府)

Sing a Song for Peace                作詞・作曲・編曲 うた草

木村  会場へのシングアウトを呼びかけている、それに相応しい歌いやすいサビのメロディ。前半のシビアな

歌詞とメロディとの対比もうまくいっている。こういうソングがもっとあっていい。

   会衆と歌う部分を演奏の初めに練習したおかげで、少し緊張していた会場の雰囲気が和やかになり、また内容的にもこの歌は、参加したすべての人の願いの歌であり、コンサートの始まりにふさわしいものになりました。

     前半7小節の16分音符中心の語り、この部分の「しめ」である「祈り」がとても印象的で心に響きます。そのメロディ素材を受け継いだ次のサビの部分、歌いやすく覚えやすく、会衆と一緒に歌うのにぴったりですね。ただ、3つ目のsing a songの上のCに上がるところ、その小節がGコードなので、初めての人にはやや難しいか。譜例1もありかなと思います。もう一つ、演奏時にメロディが付点だったり8分音符だったりするので、ご注意ください。

     守りたいものからのメロディは、作者の力強い願いが込められていて印象深いです。私も共感しながら口ずさみました。

     蛇足ではありますが、もう一言。この部分が前半と同じ和音(コード)の世界で展開されますが、(以下作理1どこか1か所でも、それ以外の和音、例えば「借用和音」(譜例2)のこれらの和音をはさむと、さらに曲が深まるのではないか、と思われます。(ただし乱用は×です)

ダイアグラム

自動的に生成された説明

  ダイアグラム

自動的に生成された説明

 

作道  ○歌いはじめも初めから記譜したほうが良いと思います。

装飾音(2,3小節)の記譜は要らない気がしました。

リズムの違う所が気になりました。

11小節目のforは楽譜通り符点で歌ったほうが良いと思いました。

14小節目のSing(a)Cのほうが好みでした。

「まもりたいもの〜生命」までをもう少し色を変える効果でギターできざむとかっこよくなると感じました。

同音できざむメロディが多い感じがしました。

■全体評:「sing a song for peace」のメロディが耳に残りやすく、一緒に口ずさみやすかったです。

高畠  分かりやすいリフレインはたくさんの人と歌い交わすのにはとても効果的ですね。まさにこの歌のタイトルがその呼びかけになっています。「凍える指を組む 地下室の老人」数々のニュースを見てきた僕たちはこの歌詞を鮮明な映像としてイメージすることができます。そして私たちに突き付けられる「亡くなった数はわかっても いのちの尊さは伝えきれない」この展開もいいと思います。ハーモニーが付く部分がありますが、楽譜もそのように記譜されていてほしかったです。

   ギター一本と歌い手一人のシンプルな構成で繰り返す”Sing a song for peace”の旋律が胸にしみてくる。ウクライナの惨劇の報道に触れる毎日の中、「亡くなった数はわかっても命の尊さは伝えきれない/チャンネルを変えれば見えないけれど苦しみは続く」という歌詞がリアリティをもって切々と胸に迫る。

 

 

2.全国保育のうたごえ(保育)

いのちをうばわないで    作詞 飯田智子/作曲 眞利子律子・斉藤清巳/編曲 小泉恵美子

木村   命を奪い合う戦争について、率直に歌っている。誰もが普段使っているような言葉に歌いやすいメロディがつけられていて、子どもと関わる仕事をしている保育士たちの集団の力がまとまりやすい作品となっている。最後の「子どもの未来を守っていこう」の繰り返しも、アカペラを入れるなどして、背後にある全国の保育士の思いが伝わってくる。

    まず頭の「もうやめよう」からの8小節がとても印象的で、心に響きます。声を届けよう、からも歌詞に寄り添った良いメロディがついていると思いますが、2425のかたちと、2829の形がほぼ同じ形なので、和音を変える(例えば2回目はD7〜Gに)とか一工夫あると良いかもしれません。

     家族を奪われの部分など、2重唱になるところのハモらせかたについて、譜例4を参考にしてみてくだ

い。絶対ではないですが。

最後の部分ですが、初めに聞いた時には、ピアノが止まって、この3回同じように繰り返される音の形、3回目は少し違う音のほうが良いのではないかと感じたのですが、何回か聞き直してみると、この3

繰り返しも意外に力があるなと感じ始めました。

参考のためにあえて細かい点をいくつか記しましたが、この歌がとても良い歌であることに変わりがありません。

ギターの写真と文字の加工写真

低い精度で自動的に生成された説明

作道   ○覚えやすいメロディーですね。

単旋律だけでなく、徐々に盛り上げて作られてるように感じました。♪特に36小節目からの無伴奏で歌ってるところが訴えのような強い気持ちが伝わる作りだと思いました。

全体評:きれいにまとまってると感じました。zoom講習会でこれだけの作品ができたことに驚きました。

高畠   サビの歌詞パターンが         A声を届けようこの国から世界へ

                           B穏やかな日々が戻るように

                                       B‘笑顔の日々が戻るように          

に対して、メロディパターンが   A 声を届けようこの国から世界へ

                                      A‘穏やかな日々が戻るように

                                       B笑顔の日々が戻るように

36小節目からのアカペラが効果的でした。1718小節目のコードはG7sus4G7ですね。

    保育関係者の心をまっすぐに歌ったすなおな歌詞がすなおな旋律に乗って、みんなが心をひとつにして

歌う姿に心を打たれた。

 

 

3.あいち保育のうたごえの仲間たち(保育)

もう一人行進曲               作詞・作曲 保母理英子/編曲 藤村記一郎

木村  もう何十年も変わっていない配置基準に目を向けたことが素晴らしい。働く保育士のやりがいを歌にしている。「ここにもう一人」と最後に「ここに」を持って来たことで、解決策が瞬時にして理解される効果を生んでいる。

  「もう一人保育士を」という主張がはっきりとして、言葉とメロディもぴったり溶け合っています。すぐに歌えてとても印象的な名曲だと思います。きっとこれからも歌い継がれるでしょう。

一つだけ課題としてあげるとすれば、前半がやや低すぎて、あまり言葉が届かない気がします。

作理A→どうしてもハ長調は弾きやすいので、それで歌を作ることになりますが、その曲に一番ふさわしい調はハ長調とは限りません。今はボタン一つで移調をしてくれるキーボードもありますから、この曲はどの調がふさわしいのかを、再吟味する必要もあるかと思います。作曲の初めの段階で、いろいろ調を変えて歌ってみると良いでしょう。この曲で言えば、始まりをニ長調にして、途中からEb調に上がるのが良いかもしれません。

作道  ○2番目に入ったときに伴奏の工夫がされており、より良くなり勢いがついている。

○記譜より1度高く演奏されておりましたが原譜よりも元気さ・パワーが伝わる調になっていて、こちらの方が良いと思いますし、好みです。

全体評:子供と一緒に歌いやすいメロディ。色々な演奏会で光を浴びている曲なのだとわかる完成度の高い作品と思いました。

高畠  今年生まれた名曲ですね。歌い手の気持ち、働く者たちの想い、仕事への誇り、とてもとても伝わります。この歌を聴くことで運動が見えてきます。要求がわかります。一歩一歩運動を進めていくという意味で「行進曲」としたのもいいですね。藤村さんのアレンジも秀逸。

   「子どもたちにもう一人 もう一人保育士を」保育士さんたちの願いが直球で軽快なリズムで力強く歌われていた。スクラムを組んで歌う姿に未来への希望を感じた。

 

 

4.港新婦人コスモスコーラス(東京都)

GRADMA'S LULLABY〜ばあばの気持ち〜 作詞 真堂美織/補詩 コスモスコーラス/作曲 町澤恵

木村   ハワイアン風に、という発想はどこから来たのだろう?とにかくそれが成功している。孫を思う気持ちは同じなはずなのに、日本の祖父母の枠を超えた表現になると、日本社会に抱いている古い家族観を払拭してくれるから不思議だ。

ハワイアン風のメロディの中に、それとは違ったメロディをチョッピリ挟んだ町澤さんの曲も素敵です。

    オリコンでは珍しいハワイアン風のメロディに乗せて、ばあばのやさしさと暖かさに包まれた思い、また、しっかりと今も見つめた願いが伝わります。とても上質な音楽で、メロディや和音、ピアノ伴奏には創造性豊かな「チャレンジ」「工夫」も感じられ、私は大好きな曲です。

ただ良い曲だけに惜しむらくは、女声合唱というこの演奏形態も含め、この演奏がベストかな?とも感じました。この曲の真の価値が十分に聞き手に伝わったのか?と。例えばウクレレとかギターも入れ、前半はソロにするとか、もっとこの歌が生き生きと映えるアイディアがあっても良かったかなと思います。

作道   ○イントロの調が違うので、あれ?と思った後におだやかなアロハ調になりユニークな曲風でした。

○曲調がAA’BCと変わり、飽きのこないリズミカルなところもあり楽しい作品でした。

○伴奏の作りが素敵ですね。

○ハワイ語が入っていますが、注意書きに意味を書いてあげるとより親切だと思いました。

全体評:最後の演出が良いですね。振り付けもしながら歌うとよりユニークさが出そう。

高畠   テーマとしてはありがちですが、ハワイアンのメロディが家族への、子どもたちへの、思いにピッタリ寄り添っています。町澤さんのアレンジも楽しい。退場の仕方もよかったです。ハーモニーが付く部分がありますが、楽譜もそのように記譜されていてほしかったです。早くマスクを外してうたいたいですね。

    孫を持ったおばあちゃんの気持ちにぴったりの、のびやかなアロハ的メロディ。おそろいの黄色いレイと表情豊かな指揮者が印象的で楽しかった。

 

 

5.鳳の花蔓合唱団(教育)

〜オラトリオ「鳳の花鶴」より〜 M3 花は見ていた    作詞 佐々木淑子/作曲 藤村記一郎

木村   劇中歌なので、全体の進行の中の制約があると思われるが、歌詞が独立して完成された力を持っている。月桃という沖縄を象徴する花に歴史を語らせる手法が効果的。藤村さんのしっとりとしたおさえるようなメロディが、悲しみに迫る。

    佐々木さんと藤村さんが、壮大なこのオラトリオに取り組まれたことに、まず何よりも大きな感謝と拍手を贈りたいと思います。12月の読谷公演も成功することでしょう。この組曲の中でも、この「花は見ていた」は特別に印象深いもので、完成度が高いです。藤村さんの作品群の中でも特別に優れている名曲と感じます。

ただ(聴衆としては)4とも同じように残念ながら演奏が今一つで、作品の良さが表現しきれなかった点が惜しまれます。歌っている皆さんの気持ちはしっかりと伝わるのですが、微妙な音程、わずかなリズムの狂い、この辺をぜひ沖縄までにクリアーしていただきたいです。(藤村さんは、なかなか直接言えないと思うので、私が代理で?)

作道   ○大作だけあり伴奏もよく考えて作られています。特に@Bまで引き込まれました。後奏も素敵だと思いました。

○Eのメロディの跳躍進行が多いため、メロディを印象付ける効果が薄れてしまっている感じがしました。

全体評:この曲だけでなく、オペラ1作品も聴いてみたいと思いました。

高畠   作者の強い意志、運動の蓄積が伝わる作品。大きな公演を終え歌い手の皆さんからも自信と充実感が伝わります。ただ全体の中のある部分だけを取り出した演奏なので、聞く側としてはわかりづらい部分もあり、オリコンの講評としてはなかなか難しいです。作品全体を聴いてほしいと作者が一番強く思っているはずだとは思います。

    格調高く悲しげな美しい旋律に、一気に歌の世界に引きこまれた。「けれど月桃の花よ」から曲調がかわり、まるでオペラの舞台を見ているように情景が浮かんできた。歌詞も旋律同様に格調高く「歌」の持つ力を感じさせられた。感動。

 

 

6.愛知教職員合唱団きぼう(愛知県)

学校をなくさないで              作詞 林まなみ/作曲・編曲 藤村記一郎

木村   学校をなくさないでと言うストレートな思いを、何度も何度も繰り返すことで、学校に対する誰にでもある思い出が共有されるから不思議だ。「子どもが減っていくのなら/小さな小さな学校で/ひとりひとり大切に」と3番で歌うのは、この運動の展望を感じさせる新しい視点だ。だとすれば、3番のサビの「学校をなくさないで(3回)/わたしのふるさと」のところは、この視点を絡ませるのはどうだろう。例えば、次のように。

学校をなくさないで/子どもらが少なくても

学校をなくさないで/ひとりひとりを大切に

学校をなくさないで/ふるさとをなくさないで

    私の住む地域にある小さな分校のような学校も、20年ほど前から統合されようとしてきましたが、仲間たちの存続の働きかけや、地域を若い人たちで盛り上げていく営みの効果もあり、いまだに子どもたちの歓声に包まれています。ですから、この曲は「わたしの歌」としても心に響きました。前半から一番伝えたいことが出てくるアイディア、またそのメロディがいいですね。また「みんなで歌う合唱は」からの広がりも心に深く響いてきます。

作道   ○「学校〜ふるさと」を強調して何度も出てくるので、他の歌詞のメロディが埋もれてしまってるように感じ、もったいないと思いました。

○最初から歌で持ってこず、前奏で工夫して奏でて入り「ここは〜」とスタートし「学校を〜」と入るとインパクトが出るかもしれないと思いました。

全体評:母校がなくなるさみしさや教職員などの想いが作品に込められており、この想いをもっと沢山の方に伝わると良いなと感じました。

細野   教育の合理性、社会。やさしいことばで「おかしいよ」がよく伝わる。女声のびやか、男声とのかけあい素敵。

    社会詠としての「学校をなくさないで」という歌詞が歌繰り返される。「歌」にすることでみんなが心をひとつにし、多くの人に訴える力を持っていると感じた。

 

 

7.みどりんコーラス(愛知県)

君の素晴らしき一年 〜卒業の日に〜 作詞 片岡泉+みどりんコーラス/作曲・編曲 藤村記一郎

木村   学年の1年を振り返ることはどこの学校でもできるだろうが、こうして歌になるとその学年の特別な思い出になる、素晴らしい実践。3枚ずつ絵をめくっていく演出も想像力を掻き立てる素敵な演出。

    君に会えてよかったから始まる冒頭の印象深い8小節と、それに続く16分音符が中心の語りの部分とのバランスがとても良くできています。これをサプライズで聴いた卒園生たちのこころに、きっとほっこりした想い出が残ったことでしょう。

調のことについては、曲3作理Aを参考になさってください。もう少し音が高い方がこの歌には良いように感じます。

作道   ○前奏がほしくなりました。

伝えたい詞が多いので作曲する際、大変だったのではないかと思いました。

○子供でも歌える曲を書くという難しさからも、所々子供が歌いやすく、好きそうなフレーズがあり素晴らしいと感じました。

全体評:園児が演奏しているのを聴いたら、涙がたくさん溢れてきそうなあたたかな作品ですね。

細野   幼年時代、人生の出発点というべき時代、過ごした時間。具体的な詩情がすてき。歌詞を包みこんで飛ばすような曲。保育と地域の皆さんで歌われるといいです。

     園の子どもたちの姿がまざまざと目に浮かび、歌とともに走馬灯のようにめぐっていく。「なんでもない日々がかけがえのないまぶしい日々だった」が心にしみてきた。作曲の藤村先生の歌声のみずみずしさに感動。

 

 

8.名古屋青年合唱団(愛知県)

戦争はいやだ!              作詞・作曲 さとうとしたか/編曲 藤村記一郎

木村   歌詞が面白い。日常の若者の感覚に近い表現がこの国の実情をよく表している。グレー、ヤバイ、ブラック、タブーなどの言葉の使い方もうまい。「YES! ME TOO!」の使い方は最高。後半、2拍子を挟んでサビを3拍子するなど、既成概念に拘らないメロディも面白い。自由奔放に、今後の作品にも期待したい。

    この歌は専門的にみると未完成感につつまれているのですが、なぜか逆にそれが新鮮な良さにもなっていると思われます。妙に(と言ったら失礼か)心をつかんで離さないのです。戦争はいやだ、戦いはいやだ、という私たちの願いがそのまま歌になり、世界中に飛んでいくかのようです。

愛知の時にも感じたことですがOHNONO!の後、3拍子になるところからが何ともよくできていて、「戦争はいやだ」の言葉とメロディリズムが溶け合って心に響いてきます。大切なことは対話すること、みんなで声をあげること、ほんとうにそうですね。

作道   ○メロディーラインが少々難しい作りに感じた。

1316小節の対比が良いけれど、1416小節目はcisで記譜の方が自然かもしれません。

Aの部分は戦争の恐ろしさを表現できていると思います。

○最後の終わり方も明るすぎない方が良いのかなと感じました。

全体評:詞の内容が深いので、明るすぎなメロディだと少々ギャップを感じてしまいました。

細野   歌詞 情勢が話し言葉で、曲に乗って効果あり。(不安、恐れ)男声・女声のかけ合いがすてき。街頭で歌での宣伝に期待!

    「新しい戦前」に警鐘を鳴らす作品。創作と演奏の感動の中で、みんなで「戦争はいやだ 声をあげよう」という気持ちを共有し伝えることのできる大切さを感じた。

 

 

9.「北の大地に」をうたう仲間たち(愛知県)

北の大地に                     作詞 高橋雅子/作曲 脇谷直樹

木村   北海道祭典に相応しい歌詞。メロディもオシャレで、祭典への期待感を感じさせる。創作した愛知のグループと祭典を開催した北海道のグループが一緒に歌うのもいい。野外フェスで取り上げられても良かったですね。

    この歌を札幌で聞くことができてうれしいです。もっと祭典のあちこちで歌ってほしかった歌です。特に3拍目から始まる冒頭の8小節、ここが何ともいいのです。これだけでこの歌は大成功を勝ち取っています。札幌の空のようにさわやかで美しくて。(実際は猛暑でしたが・笑)

      そのあともことばと手を取り合いながら自然に流れるようなメロディが続きます。ところが、歌いかわす時が来た!さあ、というところで、やや音楽が伸びを欠いたか?と思われるのがただ一つ残念な気がしました。肝心の「北の大地に」からが、(もちろん良いメロディなのですが)すばらしい前半からの流れを受けるにしては、ややもの足りないのです。私の思い過ごしかもしれません。それが何かも私にはわからないのですが。すみません。

作道   ○爽やかな感じはするのですがさらさら〜と1曲が終わってしまい、もっと耳に残せるフレーズがあると良いかなと思いました。

○最後の「よろこび(の)」「の」 フェルマータのCisへの上がり方が不自然に感じました。

○3番へ飛んでからの同じフレーズではなく、少し変化をもたせてCisのフェルマータへ持っていくと効果的だったかもしれません。(上行形ではなく、下行形にしてみるなど)

全体評:サブテーマソングに選ばれても沢山の方に届けられなかったのは残念でしたが、これを機にもっと広がると良いですね。

細野   歌詞が北の大地のさわやかなイメージ。それだけでなく、【北の負の歴史】も入っているが、辛口にならず、統一感あり。全部混声でなく、ちょっとパートが主となるメロディがあっても?

    北の大地を歌う爽やかな歌。熱暑の札幌に涼しい風がふいてくるような気がした。「台地にちらばる美しい地名 自然をいつくしむ先人」とはアイヌ民族のことを示しているのだろうか。忘れてはいけない大切な視点だ。

 

 

10.名古屋青年合唱団うたの学校昼のコース アガトス19期(愛知県)

あなたの声を聞かせてください

原詩 猪子瞳/作詞・作曲 伊藤さち子・猪子瞳・小森隆幸・酒井俊一・田中直子・林秀・林恵美・八木月子・武藤佳子

木村   街頭に出て広範な人たちの要求を聞く、と言う行動を巧みに歌にしていて面白い。19期にもなるアガトスの歴史を感じる。ただ、3番の「まとめ」は苦労したのではないか。願いや不安を受け止めてつくりたいのは「街」なのか「道」なのか?「希望の星」と歌う「あなた」とは、街頭の広範な人なのか、それとも身近にいる具体的な「あなた」をイメージしているのか?

理論的な整合性を求めているのではない。イメージの「移行」見たいなものの流れの自然さがあった方が言いたいことが伝わるのではないか、と思う。例えば、「そんなあなたこそ/希望の星」のところを「あなたの声から/生まれる希望」とすると、題名の意図が繋がるように思う。ここまで書くと「わたしたちの星」と広げる必要があるのかどうか?「わたしたちの街/かがやいて」のようにあまり広げないで終わるのもありですかね。

    集団で創作を続ける中で生まれたこの歌、駅前での訴えに着目したまなざしに、まずは「あっぱれ」です。ことばに寄り添ったやさしい、歌いやすいメロディが続き、最後の「なくしてほしい」の上行が、この歌を引き締めています。このわずか2小節で、聞いているもののこころに、この歌の願いがググっと届くのです。また、感心したのはピアノ伴奏者による?アレンジです。さりげないのですが、1回目と同じメロディに別の和音をつけ、音楽をより深く彩っています。

作道   ○コード表記があると路上などで歌ったり、他の方が演奏したいときに親切だと思います。

単調にならぬように4小節で1フレーズですが、繰り返すだけでなく所々工夫しているのが良いですね。○1番聴かせたいメロディがどこかわかりやすく、そこへ持っていく為に盛り上げているのも伝わりました。

全体評:集団創作の経験のない私にとって、意見を出し合ったりアドバイスをもらったり生まれた作品は皆さんの宝物になっているんだなと伝わりました。

細野   詩…集団創作の工夫が想像できます。現代の格差が見える。

曲…3番、歌い方メリハリがあったけれど、もっとあってもいいかも。

    2年に1度の共同制作で作られたという歌。「あなたの声をきかせてください」という題名そのままのやさしく語りかけてくる歌。いろいろと語りたくなり、最後に「そんなあなたこそ希望の星」と言ってもらえて勇気を得る、メンバーの思いのつまったすてきな歌だと思った。

 

 

11.チームU150(愛知県)

はばたけU150                                作詞・作曲 武藤佳子/編曲 尾関記久子

木村   コンプレックスを歌にするのは難しいし、勇気もいるが、背が低いことを明るく歌い飛ばしていて共感を呼ぶ。「U150」と言う造語も秀逸。ソングブックには6月12日付けの楽譜が載っているが、当日は7月12日付けの楽譜が配られて歌った。この修正が作品を一段と良くしている。武藤さんのコミカルの才にも驚いたが、楽譜の末尾に記載してある「for A.with love」の表記が、Aちゃんを励ますために送ったという動機に触れられていて心が動く。

    この歌を聞きながら、歌には力があるのだなあと改めて感じました。マイナスと思われることを歌にして吹き飛ばしてしまおう、前に歩みだす力にしてしまおうという清々しさが、聴く多くの人たちの共感を呼びます。良い作品です。

愛知の時から、わずか1か月ほどの間に修正をされたわけですが、その謙虚さ(執念?)が見事に決まり、良さが倍増しました。U150あっぱれです。

作道   ○コンプレックスは他人にわかってもらえない、でも辛い。そんな題材で創作したことはとても素晴らしいと思いました。

○今後もなにか勇気づける作品を作っていける良いキッカケになりますね。

○コード表記があると誰でも歌える機会が増えると思います。

○最後に「もう1回!!」の掛け声も良いですね。元気が出ます。

全体評:共感できる詩がたくさんあり勇気づけられ、ユニークに作られており楽しく聴くことができました。

細野  詩…アンダーイチゴーマル(どこかで記事を読んだことあり)そのことが実にリアルに、ユーモアが希望につながるのが伝わる。歌い方すてき。リズム感。

    U150とは何か?と思ったら under 150cm。背の低い人のあるあるを愉快にうたい、コンプレックスをふっとばしてくれる楽しい歌。私自身もチビなので共感をもって聞けました!

 

 

12.コンブリオ(宮城県)

カフェ ら・めーる                                 作詞 菊地美津江/作曲 石垣就子

木村   大震災から13回忌に当たる年に創ったという歌詞。大袈裟な表現を用いず、「あんなことがあったけれど」だけにとどめた表現とお店の描写が、臨場感を増す。最後の店名と「母の中に」、「海の中に」の繰り返しが心に沁み込んでくる。その詩の良さを受け止めたメロディも良い。

    私事ですが、震災半月後の渡波(わたのは)小学校の避難所で、炊き出しのお手伝いをした時の息を飲む光景と、私たちの持っていった綿あめ機に集まってきた子どもたちの笑顔を思い出しながら、この歌をお聞きしました。

      波と風を思わせるような16分音符の前奏と後奏、しみじみとした曲調、ことばとメロディの溶け合い方も良くできていると思います。後半の「ラ・メール母の中に」からのメロディがあまりにも素敵なので、ここだけではなく、例えば冒頭でも一度歌うとか、ピアノの前奏の中に匂わせるとか、構成上の工夫があっても良いのではと感じました。

作道   ○1〜3番までの歌詞を少しずつ工夫していますが「うみべのまちの」のフレーズが少し不自然に感じました。例えば「ファ#−ソ−ファ#−ミ− レ−ド−シ(Bm)」など自然に聴こえるかもしれません。優しい感じの伴奏が素敵でした。

全体評:様々なおもいが込められたノートから生まれた詞。忘れられぬようさらに音に命を吹き込まれ、作品となり大切な一曲になっていると思います。

細野   詩…ドラマに出てきそうな「カフェ ら・めーる」。海辺の暮らしー震災―再生?人がほっとする居場所づくりー具体的表現良。

       曲…シャンソン風でなく、歌いやすいメロディにほっとします。

   津波で流された町の更地にぽつりとある「カフェ ら・めーる」。人々の心の拠り所となっている実在の喫茶店。その景色が目に浮かぶ。静かな物語のような歌。「あんなことがあったけど みんな 海が好きなんだ」という歌詞にぐっときた。

 

 

13.みやぎ紫金草合唱団(教育)

じいちゃんのねがい         作詞 薮田佳典/補作詞 みやぎ紫金草合唱団創作部/作曲 石垣就子

木村   孫たちとのふれあいと、迫る戦争の危機、現実との対比が自然な流れで書かれている。最後の3行には合唱団の皆さんの強い意志が語られ、補作詩「みやぎ紫金草合唱団創作部」とあるように、皆さんの総意が演奏からも感じられた。

    平和で幸せな孫との日常の中に、ひそかに進行している戦争への足音を聞き分け、それを歌にした作者に深く共感します。冒頭の穏やかなメロディ、子どもの会話の部分もとてもよくできていて、伴奏もすてきですね。31小節からのユニゾンが特に効果的で、願いが力強く響きます。

小さなことですが、Cコードで推移する3334小節が、「戦争に行かせてはならない!」という強い気持ちを表現するには、少し穏やか過ぎるのでは?と感じました。2930もやや同じことを感じます。劇的な和音を使えと言う意味ではないですが、もう一工夫あっても良いかと。あくまで「私」の感想ですのであしからず。

作道   ○長くなるから2番をカットしたのでしょうか?

○前奏が田舎の風景が浮かんできました。

○「」のところの孫のセリフを高い音域で元気な様子を表現しておりとても良いです。○(10)からオブリガードをつけて、広がりを持たせて、71小節目の歩き続けようへ繋がっているので、よりフォルテの効果が感じられました。

全体評:せっかく作り上げた作品なので全部歌ってほしかったです。

細野   詩…じいちゃんの視点から子や孫の世代へ語るように反戦の想いが伝わる。

    曲…前半のおだやかなメロディ、後半の毅然とした反戦の表現良。

寮   豊かな自然の中で暮らす子どものいきいきとした姿と演習場の砲弾の音・オスプレイの対比が鮮やか。孫を持つおばあさんおじいさんたちの切なる願い「この孫たちを戦争に行かせてはならない」が穏やかにしみるように伝わってきた。「私たちにはことばがあり、歌がある」という言葉にこめられた決意が強く心に響いた。

 

 

14.白鷹うたう会(山形県)

ばっちゃは私の応援団長     作詞 ろくろべ/作曲 ろくろべ・小林昭義/編曲 武義和・小林昭義

木村   ろくろべさんの作品は、いつも味がありますね。田舎暮らしの生活をしっかりと根をはってやっているからこその表現ですね。ばっちゃとのエピソードでは「歌」が出てくるのもいいですね。最後の方の「ばっちゃと過ごしたあの時を 今私が返しています」と世代間の引き継ぎを表現しているこの1行もいいですね。オリコンに焦点を絞って、毎年全国に出てきているのは素晴らしいことです。声もいいし、演奏も良かったです。

    この歌の伴奏者として半年近く、白鷹の皆さんと共に歩ませていただきましたが、作曲的な助言は全くしていません。しみじみとした懐かしさ、やさしさに満ちたこの歌が、詞曲共にとてもよくできているからです。練習段階では自信なさげに聞こえた演奏も、見違える(聞き違える)ように本番では表現力が高まり、聴衆に届く演奏となりました。次の作品も楽しみにしています。

作道   ○前奏からグッと心を掴まれるとても優しいメロディから歌へ入る時の自然さ、さらに素敵なフレーズで感動しました。

○「にこにこばっちゃ」のメロディが特にステキです。使ってる和音もあまり耳にしない感じがより効果的に感じました。

全体評:50年歌い続けてこそ生まれた作品なのでしょうか。大変すばらしい曲だと思います。もっと歌い続けてください。

細野   詩…祖母は人にとって「ふるさと」かもしれない。ある地方の個人的体験を越えて、優しい歌詞が抒情を生んでいる。

       曲…女声 語るような歌い方。透明感。男声 力強さ表現あり。

   歌い続けて50年のグループ。祖母の慈しみの中で愛情たっぷりに育てられた自分が今やその祖母の立場。

「今や私が応援団長」と子や孫たちに夢を注ぐ姿がすてきだ。昔話を聞くように聞けるやさしい旋律がよかった。

 

 

15.うたごえ喫茶燦燦(教育)

かげおくり                                作詞 いがらしのりこ/作曲・編曲 安藤由布樹

木村  「かげおくり」という遊びを通して、母親との別れをうたっている。詩は極力無駄な表現を省いていて、曲がそのイメージを膨らませるようにゆったりと流れています。戦争のことは言わなくても、死者の安息を願うことも平和への願いになることを学びました。

    安藤先生の作品、嬉しく聴かせていただきました。美しい伴奏、歌詞に寄り添ったメロディ、素敵ですね。女声合唱にしてもよさそうです。かあさんとのかげおくり、こんな平和で幸せな日々が、明日も続きますように。

作道   ○歌いやすさで移調する方はたくさんいると思いますが作曲者は曲を書くとき調性で悩み、いかに詞のイメージに近づけるかを考えたりすると思います。

○原譜ではヘ長調となっており、柔らかさ・素直さ・ピュアな感じをイメージしていると感じます。

○「かあさんとわたし」の「わたし」の5度の跳躍が不自然に感じました。

全体評:移調して演奏するのであれば低くした方が良かったと思います。諸説によるとレクイエム・神を表す調とも言われているD dur(ニ長調)でもよかったのではないかと思いました。

細野   詩…新しい唱歌。詩をシンプルにして曲にすべてのイメージを含めて。歌い手の表現すてき。

    「影送り」の静かで悲しいメロディが削りに削られたシンプルな言葉とリリカルな旋律でつづられた曲。情感たっぷりの歌い方が透明感ある悲しみをさらに強く感じさせてくれた。

 

 

16.イルカ守りたい(青年)

イルカの気持ち                             作詞・作曲 隅広智子/編曲 たかだりゅうじ

木村   イルカの視点で書いているのに、なぜか説得力があります。題名の通り、イルカの気持ちになってイルカの意見を代弁しているようですが、イルカの保護活動をしている方の代弁とも言えますね。こういう視点はとても大事だと思います。青年の中から生まれたことも嬉しいことです。

    絵本をそのまま歌にしたような、素直できれいなメロディの作品ができました。今まで考えたことのなかった水族館のイルカの気持ちが、この歌を通して伝わってくるように思います。ピアノも3人の演奏も素晴らしかったです。アレンジもいいですね。

       一つ蛇足ではありますが、この曲にはCAの動きが「もぐる」「みーて」「かかっても」「らー」の4回出てきます。この4回のコードがすべてCFなのですが、そのことと、この曲からやや平板な感じを受けるのと関連があるのかもしれません。

      「こうしなさい」ではなく「ご参考までに」ですが、譜例3として、同じメロディで、こんな和音の流れもありますというサンプルを作ってみました。作理Bすべてを変化させる必要なないですが、一か所か2か所「ここぞ!」というところで和音を変えるのも効果的です。

ダイアグラム

自動的に生成された説明

作道   ○優しいメロディの中に水族館にいるイルカの辛さ・悲しみが込められており切なくなりました。

○3拍子も曲のイメージに合っていて良い感じです。

○前奏にセリフが入ってるのが、どんな曲かわかりやすくするための効果として生きていると思います。

全体評:イルカの気持ちを知らない人が沢山いると思います。私もこの作品を通して知ることができイルカの保護活動を伝えられる素晴らしい題材ですね。

細野   詩…イルカの気持ちー商業主義に何もかものみこまれていく現代、海の汚染が問題。そこは書いていないが、その先にあるものは暗示。

       曲…波のうねりのようだ。

   「水族館のイルカの物語を書きませんか?おちこぼおれのイルカががんばって芸ができるようになって人気者になる実話です」と言われて断ったことがある。イルカの気持ちを考えたらイルカショーは楽しめない。その気持ちを歌にしてもらえたように感じる歌で、聞いていて、とてもうれしかった。

今まで当たり前と思っていたことの中に、虐待や差別がある。それを声高に糾弾するのではなく、こんなやさしい歌にして伝えられたら、それはとてもすてきなことだと思う。

 

 

17.ギッチョ・ジムーチョと仲間たち(大阪府)

カジノはあかん                               作詞・作曲 立川孝信/ピアノ編曲 森二三

木村   カジノの問題点を余すところなく書き出して、「カジノはあかん」と思わせるのに効果抜群です。沢山の言葉が並んでいますが、1番から3番まで、違和感なく言葉がメロディに乗っています。ただ、「だから 税金を 無駄な開発使わせない」のところは精査が必要か。「開発に」と言いたいところだが字余り。八分休符を飛ばして「無駄な開発に」とうたえるけれど音の上がり方が不自然か。「難しいことには使わせない」とするとうたえるが、「開発」と言うタームを捨てられるか?

いずれにせよ、基本的な流れはできているので、耳から入る言葉を歌いながら微調整していければいいのでは。

    カジノはあかん、歌われている歌詞の内容まったくその通り!こういう歌には、この歌のように軽快なメロディ、シンプルな作りもいいなあと思いながら聴きました。

ただ、大切でぜひ伝えたいことばが、ピアノの伴奏に消されてしまう個所もありやや残念、調の問題とあわせ(作理A曲3参照)次作への参考になさってください。

また、CFG3つの和音で曲を作ることが悪いわけではないですが、曲の広がり、深さ、音楽としての面白さを考えると、もう少し使える絵具(コード)を増やすことも必要かもしれません。(譜例3参照

ダイアグラム

自動的に生成された説明

作道   ○伴奏が激しく演奏が大変そうですが、カジノの騒がしさを表現できていると思います。歌のみだとカジノ感が伝わらなかったかもしれません。

○メロディがとても簡単に作られているので覚えやすいかと思いますが、同音でたたくフレーズが多いので単純に聴こえてしまいました。流れるような曲ではありませんが、もう少し横のフレーズを意識するともっと良くなるのではないかと思いました。

全体評:カジノ反対運動の曲だけではなく、パフォーマンスしながら歌う作品が増えていくといいですね。

細野   歌詞…みえみえ悪政、しっかり書かれています。

    曲…パフォーマンスも良。軽やかな曲にのってアピール。街頭でアピール期待。

    切実なカジノ問題。わかりやすくユーモアも交えた歌にしてくださって感謝。TV「みんなのうた」で毎日流してほしいくらいです。悲壮感を押し付けるのではなくて、軽快でリズミカルな歌にして伝えることで、より多くの人に伝わると思う。

 

 

18.パレアナ(大阪府)

109台ベビーカー平和の種となって                     作詞 千秋昌弘/作曲 森二三

木村   軍事侵攻1ヶ月足らずで亡くなった子どもが100人を超えたことに抗議して並べられた109台のベビーカー。その衝撃的なニュースに反応して、創られた曲もまたインパクトがある。私たちは解決の手段を持ち合わせていないが、世界の平和を祈ることはできる。その強い思いがメロディと声になって届いてくる。

    反戦の強い願いを込めた、音楽性豊かな名曲です。千秋さんの詞は、いつも着眼点・テーマの選び方が素晴らしいと感じていますが、この歌も同様です。

普通の人には高い音域ですが、作曲者が歌い手、千秋さんの音域をよくご存じなので、千秋さんの声にぴったりの、表現力豊かな曲、そして演奏になりました。「祈っているよ」から、ニ長調に移行するところが私は特に好きです。春風が平和の種を蒔いてくれますように。

作道   ○歌曲をイメージされて創作されているのでしょうか。

○伴奏が工夫されよく考え作られています。

○転調の仕方など詞にとても合っており素晴らしいです。

全体評:誰でも歌える作品というよりもソロで伝える少々難易度の高い作品に思いますが伝わるものがありました。

細野   詩…ウクライナ戦争の現実。ベビーカーは幸せの象徴であったはずーよく表現されている。

    のびやかな感情こめた表現、すばらしい。

    一編の短編映画を見るように光景が目に浮かび、今も戦争が続くことを改めて思わせてくれる。悲しみと怒りの曲想のあと、最後に明るく透明な曲想で希望を感じさせてくれてうれしかった。

 

 

19.ちばりよ〜沖縄合唱団(大阪府)

轟壕(ガマ)の子守歌   作詞 高砂保子/編詞 ちばりよ〜沖縄合唱団/作曲 鬼崎良弘/編曲 治郎丸智希

木村   ちばりよ〜沖縄合唱団は、毎年沖縄を訪れ、戦争の足跡を訪ねている。その度に、沖縄の戦争の実相に迫る作品を創っているのは、素晴らしい活動だと思う。高砂さんの詩にも、当時の実態に迫る力があって、合唱団の皆さんが体験したのと同じように、胸が締め付けられる感情に突き動かされます。

    78年後の今も、こうして新作を作りつつ沖縄を歌い続けていらっしゃるみなさんに、心から感謝と敬意を表したいと思います。この歌は音楽的にもとてもよくできていますが、そういった評価感想を安易に書いて良いのだろうかという畏れを感じます。私もガマに何度か入りましたが、この悲しみと怒りの事実を、この歌を通してぜひ伝え続けてほしいと願います。

作道   ○前奏にすごく力が入っていてこれからどんな曲がはじめるかと思っていくと、歌がはじまると控えめな伴奏になってメロディに合わせて歌を引き立てるためかと思っていると、間奏がまた複雑に考えられている。そして、歌に入るとまたひかえめに「抱きしめて〜会えるよう」から伴奏が盛り上がり間奏で力が入る感じがした。

○混声で演奏されており楽譜も混声バージョンを拝見しながら聴きたかったです。

全体評:歌のメロディよりも前奏間奏にフォーカスしてしまいましたが、混声で歌うことでより大曲に聴こえました。

細野   詞…ガマの子守歌―あの戦争がなかったらこの歌は生まれなかった。「よいしよいし なくなよ」−表現すばらしい。女声SA、ぎりぎりの思い、こまやか。

    曲…どこかに沖縄の旋律があればと。

    沖縄戦で起きた悲劇。洞穴ガマの暗闇の中で乳もろくに飲ませてあげられなかった我が子。息絶えたその子の顔を手で触わりその形を何度も確かめたという実話。こうして歌に刻まれ歌われ、人々に聞かれること、どれだけ大切なことか。薄れていく戦争の記憶の中で、語り継いでいくことの大切さを改めて感じさせてくれた。ありがとう!

 

 

20.C57(宮城県)

月のうさぎ見上げて                                  作詩 山本芳恵/作曲 南部大地

木村   人類は昔から夜空を見上げて願いを呟いて来た。それを月の兎にしたことで、時間と空間の世界が広がりました。子どもの頃からの1番と、大人になっての2番は時間の広がりです。「繰り返される愚かな戦い 世界が涙で滲んでいく」と言う表現は秀逸。月を見上げると、その気持ちが響いてくる。山本さんの作品はどんどん階段を駆け上がるように進化している。

その詩に曲をつけてくれる、小林康浩さんに代わる新しいパートナー南部大地さんの曲も素敵です。

    詞も曲も内容が深く、香り高い作品だと感じます。ぜひもう一度聞いてみたい曲の一つです。一番は「私と月のうさぎ」ですが、それが2番では世界のうさぎに広がって行きます。ウクライナの空にも、地震に震える人たちの夜にも、貧困の子どもたちの上にも、月は同じように天にあって私たちを照らし続けているのですね。

南部さんの曲も演奏もレベルが高く、和音もおしゃれで、これからどんな作品が生まれてくるのか、とても楽しみです。蛇足ですが、作理Cこの曲はEb調の曲ですから、Ebが主和音であり、文章に例えればこのコードが「。」に相当するわけですが、この「。」が少なすぎるのかなとも感じます。12小節で一度落ち着いた後、「。」としてのEbは35小節の終わりのみです。(23で一度は戻りますが)曲の長さと全体のメリハリを考えると、もう一つくらいはEbで終わる部分があっても良いのかもしれません。67のアルトはE#ですね。

作道   ○出だしがムーンリバーに感じてしまい気になりました。他での演奏の際は記譜の前奏からが安心かと思いました。

○コード進行、パート分け細かいのは良いが、見た目がぐしゃっと見える。

10小節目4拍目の「つ」のFCと歌っていましたがどちらが正しいかが気になりました。

○言葉のアクセントに反して少々不自然に聴こえるメロディがある。(47小節)

全体評:曲名が素敵だなと感じました。歌詞だけ読んでみても、メロディをつけても違和感はなくよく考えられているなと思います。

細野   詞…平和な世で月のうさぎを見上げたい。反戦の思い。

    曲…混声。語るような歌い方、マッチしてます。忘れないでーメロディ印象的。若い作曲者の才能すばらしい。

    おとぎ話のようにやさしい語りと曲。昔話でもきかせてもらえるようにききながら、今あるこの世界について考えさせてくれる歌だ。月をみながらこの曲をきいてみたい。

 

 

21.ダルセーニョ(国鉄)

歌っているときゃ青年                                      作詞・作曲 佐々木伸介

木村   なんだかんだと歌いながら、うたごえ運動にとって今1番ホットなテーマ、青年との関わりをテーマにしているところがすごい。伸介さんのパフォーマンスは年齢を重ねてますます磨きがかかってきた。若きピアニスト南部大地さんとのコンビ。新しい青年と老人のコンビに乾杯!

    佐々木さんののびやかな声、若々しい歌を今回も聞けてうれしいです。ほとんど同世代のものとして、笑いながら、うなずきながら聴かせていただきました。この歌を座右のうたとして、私も「歌つくりをしているときは青年!」で行きたいと思います。曲17と書いていることが相反しますが、この歌の場合はこの3つの和音でいいのかなと思えてきました。

作道   ○151740425254小節の休符の所で掛け声や追いかけがあるともっと楽しく歌えそうな感じがしました。

○行進曲風に作られていてユニークです。

○ソロでも合唱のどちらでも、演奏しやすそうで、楽しく歌える作品だと感じました。

全体評:歌詞と曲が大変マッチしていて良いです。聴いているだけで笑みがこぼれました。

細野   詞…いや〜よく判るな〜。本音! 舞台に立てば青年 OK!

       曲…心意気ばっちり決まっていました。

    元気で愉快な歌。「歌ってるときゃ青年」という歌詞そのままの元気さ。歌詞・ゼスチャーがあいまって実に楽しく聞かせてもらった。

 

 

22.こまえ平和フェスタ合唱団(東京都)

虹をつなぐ                    作詞 坂本琴音/作曲・合唱編曲 大熊啓/伴奏編曲 加集希世子

木村   若者が率直に語る詩に、心を寄せたメロディ。前半が特に良い。大熊さんの新しい境地を見た思いだ。ただ、「伝えていく」と誓う、ターニングポイントが「伝えてもらった」では少し弱い気がする。作曲者はそこを「文字で」「数で」「写真で」をパートに分担させて重ねる工夫をしている。形式に拘らない作曲をしているのであれば、「文字で/知った」、「数で/知った」、「写真で/知った」「そして声で/伝え知った」くらいに畳み掛けた方が、「伝えていく」内容への共感が伝わるのではないだろうか。

       後半は、もう少し大きな人数の合唱になるともっと伝わってくるだろうと言う予感がする。「こまえ平和フェスタ」での本番はきっとそうなるのだろう。

    コンサートで聴いた曲のその価値を、あとから発見することがありますが、まさにこの曲はその通りの曲で、今譜面を見て弾き歌い直してみて、実によくできている曲だなあと驚いています。ことばとメロディ和音が調和して、歌うものの心がその世界に引き込まれて行きます。コードD♭の使い方も新鮮で適切でいいですし、3336の和音、また途中の転調も自然で新鮮で秀逸です。ピアノ伴奏も歌を盛り立てています。作曲者伴奏者に「あっぱれ」です。

作道   28小節目まで単調な感じだったが、29小節の所で曲調が変わり、「お?」と思いました。

2628小節の「つたえてもらった」だけが少し単純さが目立ち、せっかく29小節から素敵なメロディがあるのでもったいなく感じました。

○伴奏がよく作られており、盛り上げるポイントを踏まえている。はじまりの前奏が勿体無く感じました。

全体評:混声バージョンで演奏されていたので、今回の曲集も同じ記譜のものを拝見できなかったのが残念でした。

細野   詞…平和の虹、世界中にかけよう。次の世代へー生きているみんなの願い。

    曲…詞とマッチした壮大なメロディ。

   地域の子どもたちに贈るメッセージソング。市民を公募して平和フェスティバルで歌うという。その試み自体がすばらしい。まさに虹がつながれていくだろう。指揮者の「憲法」と背中に書かれたTシャツも心意気を示していてよかった!

 

 

23.国鉄広島ナッパーズ(広島県)

風の列車                                         作詞 門倉詇/作曲 たかだりゅうじ

木村   「そこにいるけど/そこにはいない」という冒頭の2行で、あるべきものが失われた重さを突きつけられる。門倉さんが亡くなられたのが2009年。一度お会いしたかった人。こんなに年月を経ても新しい作品が生まれるというのも、さすが高田さんですね。

    目に見えないものの中にこそ大切なものがある、そんな言葉を思い出しながらこの歌を聴きました。風の列車が運ぶものは、私たちが失ってはいけないもの、風の列車の汽笛は、私たちがずっと聞き続けたいもの。そんな詞にふさわしい、高田さんの胸にしみいるメロディが付きました。前奏後奏などはピアノよりもアコーディオンが良さそうですね。

作道   ○詞が簡潔にまとめられており、単純さはなく曲を書く側の事も理解してくれているかのような作詞になっていると感じました。

○国鉄らしい男性が歌う作品だなと思いました。

○ギターで相乗効果が生まれている感じもします。

全体評:曲を聴いていて、風景が目に浮かんでくる事はすごい技術だと思います

細野   詞…門倉さんの詩が、今よみがえる。時代がよくなっていないと知る。

    曲…静かだが怒りがこもった曲。さすが。

    廃線になった鉄道を幻視するノスタルジックな美しい歌。黒い服に身を包んだ男たちが鉄道マンたちであると知ると涙をこらえきれない。合理化され人間が疎外され置き去りにされていくことの、こんな静かな形での抵抗。がんばってほしいし応援したい。ギターの音色もとてもよかった。

 

 

24.Part Time(岩手県)

パタカラソング                                作詞 高屋厚子・修/作曲・編曲 高屋修

木村   嚥下機能強化の体操をヒントにしたと言う、極めて実践的な創作。言葉遊びも楽しいし、この歌を必要としている人は、これからも沢山出てくるのでしょうね。

    お二人の息の合った歌を久しぶりに聴けてうれしかったです。私も平日はほぼ毎日、高齢者たちと歌ってきましたが、このパタカラソングを今度は歌ってみようかと思います。まさに今の時代の歌ですね。覚えやすく印象に残る歌の作り方、手慣れた実力を感じます。ぜひこれからもお二人で歌い続けてください。

作道   ○詞だけを見ると、どんなメロディを生み出すのだろうとワクワクしました。

○演奏がはじまると、イイ感じ!と思いました。

○嚥下機能からのヒントという事ですが、お口の体操ソングとして様々な所で演奏して欲しいです。

○子供ウケもしそうな感じもするので、子供たちとハンドパペットぬいぐるみを持ちながら歌うなどしてもたのしそうですね。

全体評:子供でも歌えそうなリズミカルで楽しく、覚えやすそうで、記憶に残りやすい作品だと思いました。

細野   詞…明るい言葉リズム。「みんなのうた」のような、実は嚥下予防のため。パタカラ、元気が出る歌です。

       曲…リズムに乗れるかな、老人は?

    弾むリズムで楽しい語呂合わせのナンセンスソング。子どもたちも声を合わせていっしょに歌えるやさしいリフレインが魅力!いつまでも楽しく元気なコンビでいて下さい。

 

 

25.いずみの森合唱団(大阪府)

ギターかかえて                         作詞 川野和子/作曲 根木慶子/編曲 藤村記一郎

木村  前田光男さんには、創作部でお世話になりました。コンパクトにまとめられた詩には、彼が皆んなの中で活動し、愛されていたことが良く伝わって来ます。ご冥福をお祈りします。

   前田さんを思う悲しみの歌ですが、思いっきり明るく歌うことで、ご本人も喜んでおられる気がします。「平和を愛し」からののびやかなフレーズが前半とよく調和して、とても印象的です。終わり方もいいですね。音の高さがやや気になる点です。ハ長調でいいのか、前半はもう少し高い方がより伝わるのではないか、そんなことも感じました。作理2(曲3参照)

作道  ○11小節目4拍目の「ミ・ソ」より「ミ・ファ」の方が自然でコードと合っていると思いました。

40小節目の「ラーミドーラー」も不自然さが感じられました。私なら「ラーラシードー」(上行形)としたくなりました。

○全体的に三部に分けられており、飽きのこない曲に仕上がっているように感じます。

全体評:亡くされた団員さんをおもい、静かな曲調ではなく、皆さんが楽しそうに笑顔で歌えるような、ずっとわすれない仲間たちのあたたかな気持ちが伝わる作品で感動しました。

細野   詞…哀悼の歌ということだが、明るく歌につながる友情がにじんでいる。

    曲…詞にマッチした、はずんだ曲。

    亡くなった合唱団の友への追悼の歌ときいたので、静かなしめやかな歌?と思ったが、明るく元気で楽し気な歌。故人に励まされてこれからもがんばろうと心に決めたことが伝わってきた。

 

 

26.北の国から合唱団(北海道)

あなたへ                            作詞 高木悦子・北の国から合唱団/作曲・編曲 高畠賢

木村   「いにしえからの贈り物/あなたと未来へつなげたい」にこの歌の想いが込められている。詩の構成も見事。炭鉱や鉄道など失われたものに寄せる思いを若者につなぐという合唱団の持続可能な取組みが生んだ作品ですね。

    感想を書くことが難しい曲です。音楽についてですが、もちろんしみじみと、奥行きもある良い歌です。ただ、批判覚悟で思い切って書くとすれば、高畠さんほどの歌つくりの力のある人にしては、曲がややつまらないと感じてしまうのです。もう一工夫、何かが欲しいのです。例えば3番は、半音上げるのではなく、違うメロディで始まるのはどうでしょうか?

      ただ一方、この「つまらなさ」を意識しすぎ斬新さに走ると、今度は心に響かないメロディになる危険もあります。プロの力ある作曲家のメロディが、音楽的には面白くても、意外に胸に響かないこともあります。そう思うと今度は、うたごえの高畠さんは逆にこの曲で良いのかなとも思えます。歌つくりは難しいですね。私にとっても大きな課題です。

作道   ○前奏の入り方も良いですが、1曲通しで素敵な伴奏に作り上げていると思います。

○同じメロディの繰り返しでも、男声、女声と分けているので、色合いも変わり、転調してさらに混声になるので、厚み効果も増し曲に盛り上がりを感じ、飽きる事なく聴けました。

全体評:歌い手、伴奏、全体のバランスが良く、優しく耳に入ってきました。

細野   詞…道内にたくさんあった炭鉱、その中に「うたごえ」が育っていた。その伝統が小さな町にも生きている。(世代がかわっても)

       曲…うたごえの根っこを感じるやさしい曲。

寮   廃鉱になってさびれた町をしのぶ歌を合唱団のみんなで作ったという町へのレクイエム。切ないけれど、穏やかで、しっとりと思い出にひたれる。音楽でこのように人々が結ばれ、慰めあうことができるなんて、なんてすてきな活動だろう!

 

 

27.札幌のうたごえ(北海道)

あなたと一緒に                作詞 ときだゆうじ/作曲 たかだりゅうじ/伴奏編曲 佐藤幸恵

木村   わかりやすい歌詞、歌いやすいメロディ、祭典テーマソングに相応しい曲です。

武     祭典のテーマソングにふさわしい、歌いやすくて、こころに響く名曲です。ただ、北海道らしさは歌詞に出てこないので、そこはやや残念でもあります。

しかし、もっと残念なことは、この歌がテーマソングでありながら、私の知る限り祭典の中であまり歌われる機会がなかったことでしょうか。例えばオリコンの会場でも、また交流の部の休憩時間にも、何より音楽会の中でも、もっともっと歌ってほしかったと思います。素晴らしい出来栄えの祭典プログラムの第1ページに載せたい歌です。

作道   2023年日本のうたごえ祭典in北海道のテーマソングに選ばれている作品ということで、前から耳にし、演奏する機会もあったと思いますが、爽やかで一緒に歌いたくなるメロディーだと思います。

○「心と心を〜一緒に歌いたい」の詞にピッタリなメロディーで、スラーの掛け合いでバトンを受け継いでいる感じがしました。

全体評:手話を加えて歌うサビの演出がとても良く、以前聴かせて頂いた時よりもバージョンアップされている感じでした。

細野   詞…「うたごえはわが命」のような詞。

    曲…身体が自然に反応するような心地よい曲。

    うたごえ運動にぴったりの歌詞、やさしいメロディ。みなさんが実に楽しそうに歌っているのがすてき!公募で選ばれた一曲とのことで、光っている

 

 

28.ヤネコシンガーズ(京都府)

私たちの人生は                                   作詞・作曲・編曲 ヤネコシンガーズ

木村   うたごえ運動に長く関わって来た人にとっては「あるある」の共感できる詩。メロディは独創的で、歌い手の皆さんの中に染み付いている熟成感を感じる。

    この歌はわたしにとって不思議に満ちています。音楽の専門的に見れば未完成度も高い歌なのですが、聴き終わってみると不思議に深く心に響くのです。人生の50年間を歌にしているわけですが、なんだか歌いにくそうな前半、それが還暦を迎えたあたりから曲の雰囲気が変わってきて、いつの間にかこちらも一緒に思わず口ずさんでしまうような終盤。きっと作り手、歌い手の皆さんの生きてきた実感が、この歌に端々に込められているからなのでしょう。うたごえならではの名曲だと思います。

作道   ○メロディが単純にならぬよう跳躍させる事を意識してしまい、少々不自然なメロディーラインの所があ

り、歌いにくそうに感じました。

○「しがらみも〜」の所にrit.とありますが、Tempo rubatoの方が適していると思います。実際の演奏も、a tempoに戻っている感じがしませんでした。

○人生を詞にするのも長くなると思いますが、少々長いかなと感じてしまい、横に流れるフレーズが欲しかったです。

全体評:これからも元気に80才でも創作を続け聴かせて頂きたいなと思いました。

細野   詞…人生、それぞれの生き方、リアルに共感できる。自由、人として。平和の世の中のこと。

       曲…歌の方も明るくパワーもある。

    メンバー全員70歳を超えたとのこと。20歳の頃、うたごえと出会ったとあるから、活動歴半世紀。今も仲良く歌う姿に癒されて勇気を得た。台詞を語るとき、少女のような初々しさが。いいなァ!

 

 

29.福井センター合唱団(福井県)

マイペース★マイペース                          作詞・作曲 山田文葉/編曲 斉藤清巳

木村  「わたしのペースで」、「わたしの歩幅で」歩こうと呼びかける動機がいい。日本中の人に呼びかけたいですね。そう呼びかける作者の思いに共感している福井の皆さんの思いが伝わる演奏です。

    さわやかないい歌ですね。心が折れてしまった時などに歌うと、気持ちが明るくなって、また歩きだすことができそうです。前半のメロディは特に印象に残りやすく、これを書いている今も、思わず口ずさんでいます。どこにも記されていませんが、すてきなピアノ伴奏がこの歌をより引き立てていることも、付け加えておきたいです。

作道   ○キーが高く感じ、歌い手が辛そうな所があったのもありますが、F Dur(へ長調)ではなく、Es Dur(変ホ長調)でもあたたかみは感じられるかも?と思いました。(リコーダーを加えるのが難しくなってしまうと思いますが

○「わたしのペースで〜あるこう」の所はハモリなく歌われていましたが、無くても素敵だと思います。

全体評:歌っているみなさんの笑顔が良く、あたたかな気持ちになりました。創作を苦とせず、楽しんでいる姿が伝わり、作品にも表現されていました。

細野   詞…マイペース、社会に迎合しない生き方、自然体で歩く生き方、表現伝わる。

    曲…単調なようでいて、含みを持った曲。ピアニカ、笛、ギター、よかった。

寮     散歩しながら口ずさみたくなるような歌。疲れた足取りもリズムにのって軽くなりそう!

 

 

30.市民合唱団 Peace Call(大阪府)

沖縄の海と空                                      作詞 松本紀久夫/作曲 前田光男

木村   沖縄の問題にしっかりと向きあった詩。1番、2番の「アーアー」「オーオー」と感嘆詞を入れているところが面白い。前田さんも面白い処理をしている。ただ、縦詩の表現としては「ああ」、「おお」などの方が感じると思うがどうか。ここでも前田光男さんの存在の大きさを知った。

    前田さんの遺作の歌、胸に滲みました。作曲者の沖縄を思う心が伝わってくるような、良くまとまった名曲だと思います。コンクリート、オスプレイ、ジュゴンなどの言葉を歌にするのは難しいのですが、うまく自然に音に載せていると思います。前田さんや歌い手の皆さんの願いが届く日が来ますように。

作道   ○遺作なので、講評をさせて頂いても良いのだろうかと思いましたが、受け継がれたみなさんへという事でお伝えします。1、2番とまとまっており、5〜8小節目の反復も良いと思いました。

○3番に入り、一番伝えたい所なのかなと伝わりました。

全体評:残してくれた大切な作品をこれからも宝物として歌を天国へ届けて頂きたいなと思いました。

細野   詞…沖縄の現実、再び戦場の島にすまい。言葉に願いがこもっている。

    曲…詞にマッチした曲想。細い高音美しい。

   辺野古の海、オスプレイ飛ぶ空。「やめてくれ」とさけばずにいられない気持ちを歌に託して声を合わせる。みんなに伝わりますように!

 

 

31.埼玉合唱団創作チーム(埼玉県)

目玉焼きから始まる一日                           作詞・作曲 大野悦子/編曲 町澤恵

木村   日常の暮らしの中からの創作。これは意外と難しいものだが、作者は初心に返ってと言う思いで創ったと言う。「歌う」ことが生活の柱になっていることが伝わってきて、嬉しい。

    目玉焼きから始まる何げない一日の中に、実は私たちの幸せも喜びもあるような気がします。鶯の声に耳を傾け、うたを愛する作者の一日は、私たちの日常でもあります。強いインパクトを受けるような歌ではないですが、しみじみと味わい深い歌だと感じました。歌つくりのうまさをこの曲からも感じます。

作道   ○前奏から後奏にかけて、全てオシャレな伴奏になっており、とても良いと思いました。

○フレーズが途切れているような、小節ごとに区切って聴こえてしまい、モチーフを繋ぎ合わせた感じがしました。

○3番までの同じメロディに対し、オブリガードをつけたり、テンポを変えたりと工夫されているのが感じられて良かったです。

全体評:素敵な1日を歌っていますね。私もそんな日が来ると良いなと思いながら聴かせて頂きました。

細野   詞…これから始まる一日。共感します。みんな、こうであれ。

       曲…歌いたいラスト。もう少し情熱的、あるいはコミックに。

   何でもない日常のスケッチ。だからこそ平和のありがたさを感じる歌。疲れても楽しい歌の練習。「歌」が日常にどんな彩を与えているのかが、よくわかった。

 

 

32.移動子ども食堂くるくるごはん804(福井県)

こんにちはブギウギ                                作詞・作曲 TAKO/編曲 KIYOMI

木村   曲の「前説」としてはやや長すぎる印象だが、伝えたい意欲全開。堂々とした歌に繋がっている。

「1回目のこんには」「2回目〜」「3回目〜」と、新しい世界への出会いに対する子どもの気持ちの変化をうまく表現している。

    作曲のTAKOさんは、歌つくりに手慣れているようで、昨年に引き続きこの歌も、なじみやすくてさわやかな作品となりました。当たり前のようでちょっと新鮮で、普通のようでちょっとおしゃれで。

最後の2声(アルト)のハモりの部分、譜例4参照 作理Dきれいにハモるという点だけを考えれば、譜例のように、CGではなく、CEのほうが良いでしょう。(ただし音楽として良いかは別の問題。)

アンテナ が含まれている画像

自動的に生成された説明

作道  ○前奏4小節と、最後の2小節はピアニカで演奏されており、詞が付いていますが、無い方が良い感じがしました。

○この曲で一番の聴かせどころがオノマトペととらえて良かったのでしょうか?子供でも歌えるように簡単に仕上げられて良いのですが、もう少し言葉を使って作り上げても良い感じもしました。

■全体評:大変な活動を歌で楽しく、表現と素晴らしいですし、ギターの演奏ができる女性もとてもステキでした!

細野   詞…子ども食堂の活動が歌に。時代性を感じます。活動報告。明るいパフォーマンス。

    曲…ブギウギもこんな風に子どもたちの心もお腹も満たしてくれる。

  「移動子ども食堂」の試みをそのまま歌った。子どもたちをさそう歌、たのしい!

 

 

33.私の里をうたおう会(北海道) 

私の里                                        作詞・作曲 菊地日出彦/編曲 中川久子

木村   歌詞もメロディも雄大で、北海道の大地にふさわしい曲です。「壊しては いけない」に象徴されるように、基本的には重厚なメロディに雄大な歌詞を乗せることでいいのだが、部分的にミスマッチしているところをもうひと踏ん張りして、言葉が伝えやすいように考えたい。例えば、「壊しては  いけない」でも十分歌えると思う。

    ゆったりと平和と希望を歌うこの歌を聴きながら、豊かな水をたたえる大河の流れを思い浮かべました。メロディとことばが良く溶け合って、自然で、心をこめて歌いやすいメロディに仕上がっています。決して大げさな作りではないですが、作者の願いはむしろ静かな音の中だからこそ、しっかりと深く響いて伝わってくる名曲だと思います。

作道   ○歌に入ってからの伴奏のように、前奏も少し工夫できると更に良くなると思いました。

○4番までの繰り返しはくどく感じませんでした。

12小節目の内声の動きがきれいです。

■全体評:混声の和声がきれいに記譜されているのと、温もりのある作品に仕上がっていると思います。

細野   詞…北海道をイメージした「里」。表現の通りなのだが、もう少し個性(オリジナリティ)がほしい。

    曲…歌詞とマッチしています。

   ひと雫の露の視点から。先住民アイヌの大地だった視点から、そして加害者でもあったこの国の歴史の視点から、ふるさとの大地が語られる叙事詩。ゆったりとした曲調が北海道の広々とした大地をイメージさせてくれた。「北の国」ではなく、「私の里」という言葉を選んだところに、その思想を感じる。

 

 

34.ライブラリーズ(広島県)

ここに花咲く図書館                     作詞 寺本美和子・藤田圭子/作曲 たかだりゅうじ

木村   最初の2行が毎回繰り返されることが安定感を持たせている。次に続く情景描写も無駄がなく広島のイメージが伝わってくる。ただ、「知の拠点」は音だけで言うと「ちのきょてん」。「ち」を「知」と聞かせるのは難しくはないか。例えば、「ちしきのきょてん」などはどうか。2番、3番との文字数も同じになる。

もう一つ、「平和の軸線上」と言うのがどうしてもピンと来なくて、広島市のホームページを見た。「平和記念資料館本館下から原爆死没者慰霊碑越しに原爆ドームを望む『南北軸線上の眺望景観』は、平和都市広島を象徴する景観として次世代に引き継ぐべき大切な存在です。この『南北軸線上の眺望景観』は、平和都市広島を象徴する景観として特に重要役割を担っていることから、これに相応しい環境となるよう、原爆ドームの背景に建築物などが何も見えない姿を『目指すべき姿』としました。」とあった。広島では重要なタームと納得したものの、「ジク戦場」とも聞こえる音に悩んでしまう。「平和への軸 守る道(又は空)」ではダメだよね。

   私も図書館大好き人間ですが、図書館の存在は平和の象徴でもあると思います。風が通り過ぎる緑の木立の中で、広島の平和の発信拠点として存在してほしいと願うこの歌に、全面的に共感します。メロディも自然で歌いやすくて良いですが、よく練られてゆき届いている詞が、さらに素晴らしいです。

作道   ○せっかく前奏も作られているので、譜面通りに演奏して欲しかったです。

○上から5段目、2小節目のコードが「Bm」となっていますが、「B7」でも良い感じがしました。

全体評:この時代にこそ図書館は必要だと思います。作品と共に届きますように。

細野   詞…広島の中心に図書館を。市民の願いがこめられている内容です。123繰り返しの歌詞もよいです。

       曲…ラスト、明るくてすてきです。

    広島の願いを伝えるとてもすがすがしい作品。町への前向きの気持ち、深い愛を感じた。指揮もすばらしく表情豊かで歌い手たちとの一体感がすばらしかった。

 

 

35.アネモネ(東京都)

明かされる秘密                                          作詞・作曲 望月フミヒロ

木村   毎年素敵な作品を聴かせてくれる2人。今年の曲名を見ただけで、謎めいたものを追いかけていくこれまでの作品の秘密が明かされるのではないかと、期待してしまう。今年は、曲目紹介で「戦禍で離ればなれになった母と子の心情を描いた」と解説があった。「透明な夜 穏やかな寝息 伸ばした指先 触れる瞬間に / 君は消える…」戦禍の中、子どもを探す母親の心情が胸に迫る。そうだ、この親子には解決の術はないのだ。安易に答えを求めるだけがいいとは限らないのだと、気付かされる。戦禍の中の母親は巡り合うことを諦めず、思い続けるしかない。解決の術は、歌ではなく、作者、歌い手、聴衆に委ねられるのかも知れない。

    望月ワールド、望月さんの音の編む音の世界を聴くのが今年もオリコンの楽しみの一つでした。その期待に応えて内容の深い、望月さんらしい歌を聴くことができました。

完成された作品ですから、細かい部分については述べることはありませんが、51小節からのC#にこだわり続ける十数小節のメロディの連続が何とも印象的でした。それにしても、この難易度の高い歌を歌う人は大変ですね。

作道   ○メロディだけではなく、伴奏やコード、どれも役が与えられており、とても斬新さを感じもっと光を浴びて欲しい作品だと思いました。

○ソロで歌い上げる感じの曲ですが、また聴きたいと思いましたし、自らも演奏してみたいと思わせてくれる作品でした。

○コードの表記、ダイナミクスが大変細かく表記されており、素晴らしいと思いました。

Cの所の3小節間で上行していくメロディが素敵です。

全体評:歌としても大変良いのですが、ヴァイオリンとピアノとかでもステキかも?と感じました。弦楽四重奏用に編曲しても面白いなと勝手に想像してしまいました。

細野   詞…宛先のないレター。深い意味があります。人が別れるー動乱や戦争によって、ひきさかれる「悲哀」の深さ伝わる。

       ソロ…歌詞の深さを語るようよく表現。

    曲…ドラマチックな曲。ピアニストすてき。

    格調の高いピアノの音色に重なる言葉に切なさがつのっていく。美しい曲。静寂で美しい悲しみの映画を一本見たような充実感を覚えた。すばらしい。曲が終わったときなぜか涙がにじんできた。

 

 

 

36.D51合唱団(宮城県)

車軸探傷                                原題 新井静夫/作詞 山本芳恵/作曲 南部大地

木村   また名曲が生まれましたね。現役時代の車両点検、車軸探傷の仕事を思いながら、孫を中心とした今の時代を歌う見事な発想です。「心の傷を見落とさないで」がグッときます。退職して10年になる新井団長の発想、現役世代の山本さん詩の力、小林康浩さんから引き継いだ20代のピアニスト南部大地さんの作曲、見事な3世代連携です。

    曲のタイトルでまず惹きつけられます。これはなんだろう?と。車軸探傷、見えない傷を見つけるという大切なお仕事と、可愛い孫のこころの傷とを重ね合わせて、一人の人生を歌った味わい深い名曲だと思います。始まりの、少しくどいほどの同じメロディの繰り返しが、次の動きある部分を引き立てる仕掛けになっていますが、このアイディアは成功していると感じました。

作道   58小節目のフォルテで盛り上がって行くが、(10)でテンションが落ちる感じがしました。

○(6)(16)のメロディの落ち着く感じと詩がマッチしている所が大変ステキです。

○(15)のクライマックス感が盛り上げる効果が際立ち、グッと聴く力が入りました。

全体評:団員一人が一曲をなど、なかなかできる事ではないと思います。素晴らしい活動ですね。

細野  詞…かつての職場の仕事、労働者の良心をかけた見えない傷―社会、人間の中に、たぶんあるもの。ふりかえって書かれている。

       曲…後半のふくらみ、メリハリ、すてきです。

   「車軸探傷」とは見えない傷を見つける仕事。人の命と安全を守る仕事をする男たちの誇りに満ちた歌に胸を打たれた。しかも単なるマッチョソングではなく、「苦しい時は声をあげて 心の傷を見落とさないで」とやさしさを見せるところに、年輪を重ね、矜持をもった男たちのやさしさを感じて胸がいっぱいになった。

決して表舞台ではないけれど、縁の下の力持ちとして誠実に生き、歌を愛してきた人々。なんてすばらしい、すてきな人生だろうか。こんな人々が報われる社会であってほしい。そんな社会にしなければと改めて思った。

「愛」や「平和」といった抽象的なコトバの羅列ではなく、「車軸探傷」という専門用語、彼らの日常のリアリティを歌にしたところがすばらしい。

 

 

37.ハハトコ(広島県)

8月の空                                                    作詞・作曲 山廣朋実

木村  「こんなに穏やかなのに」「8月の大地はうたう」に集約されているように、日常の中に原爆の問題、平和の問題が根っこを張っている広島の親子の情景が、穏やかに、しかししっかりと歌われています。

    母子ユニット、いいですね。さすがに声の質が似通っているので、音が美しく響き合います。山広さんの作られるこの歌の色、私は好きです。ほかの作品もいつかお聞きしたいなあと思いました。この声域なのかと思って聞いていると、突如上のDbがきれいに歌われていて、それならもう少しこの音域も使ったらいいのにな、と思ったりもしました。8段目の頭のB♮は、Cbのほうが理論上はよさそうです。(C調で考えるとBbに書きませんか?)

作道   ○ハモりの所にも記譜があると良いと思います。

○ポップス感が強く、街角で演奏しているようなイメージを持ちました。

○夜のちょっと涼しくなった縁側のような所や窓辺でゆったりとした時間を過ごしたくなるような作品に感じました。

全体評:気持ち、風景、思い出など表現できる歌をこれからも創作活動を続けて欲しいなと思いました。

細野   詞…8月の空、イメージするのは広島あるいは長崎。山廣さんの言葉でよい。

    曲…デュオがすてき。ポップス調がきいている。

   敗戦の8月の記憶が薄れる中、若い人がこの季節を思って歌をかいてくれることをありがたく思った。すなおな、いい曲。

 

 

38.バイオ亭長浜(京都府)

愛を再び 私のそばに                    作詞 佐々木淑子/作曲 奥村忠一/編曲 橋本典子

木村   ウクライナの問題を市民生活の視点に引きつけて表現しているところがいい。「愛はいつも 私のそばにあった」と言う表現が効いている。詩の構成も1番から3番まで完璧に創られていて、曲もその構成を活かして創られている。

完璧な構成が安定した音楽を生んでいる。が、ここではあえて、それを崩すことも考えてみた。各連を「愛はいつも 私のそばにあった」かその次の行「父よ(母よ、街よ)  あなたは今どこに(私は忘れない)」で切ってしまい、曲の最後に「父よ 母よ 街よ /愛を再び 私のそばに」の繰り返しを持ってくる、全く別のメロディで。というのはどうだろう?作詞者と作曲者が連絡を取り合える環境にあることが前提かも知れませんが。

    まず始まりの8小節がことばに寄り添って、とてもよくできています。このメロディを一回だけではなく、次にも使っているというアイディアもありそうです。比較的長い曲なので、全体の曲のまとまりを考えると、同じ音楽の要素を再利用することは大切だと思います。譜例5として、参考に書いてみました。

部分部分のメロディをお作りになる確かな力を持っておられるので、全体の構成を考えると、さらに良い歌になると私は思います。

ダイアグラム

自動的に生成された説明

作道   ○一番聴かせたい所はどこなのか。メロディと詞が少々違う感じがしました。

○「愛を再び〜私のそばに」の所のメロディが9小節目の4拍目から17小節目の素敵なフレーズを持ってきた方が際立つ感じがしました。

○同じ詞を繰り返している最後の部分が物足りなさを感じました。

全体評:ウクライナの平和を願い、形にしている方が沢山いるかと思いますが、自分らしく作品に残している姿が素晴らしいなと思いました。

細野   詞…ウクライナの風景が浮かぶ。戦争は全てのものを奪っていくことをきちんと表現。

    曲…フォーク調なのもマッチしています。

   「ひまわり」「赤いスープ」というウクライナに心を寄せた歌詞。遠い異国のこととしてではなく、わがことのように感じる感受性が、今、わたしたちが求めなければならないものだろう。それを感じさせてくれる心やさしい歌だと思った。

 

 

39.うたごえサークルやまなみ(長野県)

山並越えて                              作詞 うたごえサークルやまなみ/作曲 中山英二

木村   サークルのテーマソングが壮大な曲になりましたね。それだけ皆さんの平和への思いが溢れている作品になっている。言いたいことが沢山詰まっていますが、皆さんの勢いがそれを感じさせない演奏です。

       ですが、最も訴えたいのは何か?最後に「核なき時代を 世界へ」と2回繰り返して終わっているので、このことをメインに押し出すだとした場合、1番の最後が「一つしかない この地球で」と言う“場所”、

2番の最後が「愛と平和と 友情で」と言う“手段”で終わっていて、もったいない感じがあるので、ここも「核なき時代を 世界へ」で終わるようなことも議論されてはいかがでしょうか。

    こんな明るく元気いっぱいの平和の歌もいいですね。雲よ風よからのメロディが特に好きです。終わり方も印象的で、よくできています。戦争なんて望みはしない、の部分ですが、そこだけこんな和音づけはいかがでしょうか?譜例6

 

 

 

 

 


作道   14小節34拍目の「ド#ーソード#」と減4の刺繍音メロディが少々不自然に感じました。

○34小節から最後にかけて、ハモリの所をメロディにした方が盛り上がって終わりそうな感じがしました。

○2番目の「愛と平和〜友情で」と「さあみんなで〜」の所に空白を作った方が詞と曲を見た時に分かりやすい気がしました。

全体評:サークル内だけにとどまらず、もっと沢山の方に伝えたい作品として、ずっと歌い続けられると良いですね。

細野   詞…伊那谷から生まれた詩ということですから、自然な言葉で戦争、核を望まないという意志がよく伝わる。

       曲…詞を受けて、自然なメロディ。

寮   わかりやすい明朗なメロディに、普遍的な平和への願いの言葉がのっている。歌いやすい、いい歌だと思う。しかし、せっかくなので、抽象的な言葉だけではなく、もう少し具体的な、そこにいる人の息づかいや暮らしの見える言葉を探してほしいとも思った。

 

 

40.文化集団このゆびとまれプラス(千葉県)

ふくふく〜ふくだまさひこ応援ソング〜    作詞 文化集団このゆびとまれ/アメリカ民謡/編詞 石塚早恵

木村   選挙立候補者の応援ソングとしてポイントは外していないのに、楽しいのがいい。「リパブリック讃歌」の替え歌で、曲の特徴に乗って弾むような歌詞が付けられている。メロディは有名すぎるので、楽しい歌詞がつけばすぐに歌ってもらえるのも替え歌のいいところだが、著作権のある曲を使う場合は慎重に対応する必要がある。

    一人の当選がかかっているので、少しでも人の心に届く歌を作らなくてはならないのですから、歌のつくり手の責任は大きいですね。ふくふくで始まる頭のところがメロディにぴったりです。目的のはっきりしたこのような歌は、替え歌もいいですね。ただし替え歌では作曲についての感想担当の私は仕事がなくなってしまいますが(笑)。当選おめでとうございました。

作道   ○メロディに関しては講評しにくいので、何とコメントして良いか悩みましたが、選挙応援ソングを作り、その効果を発揮できた詞が作り上げられ、福田まさひこさんのイメージソングがあるのは大変素晴らしいと思いました。

全体評:誰もが耳にしたことのあるメロディですし、詞も覚えやすそうなので、楽しく聴けました。

細野   詞…応援ソング。歌がみんなの気持ちを大盛り上げしています。

    創作曲は幅広いもの、いいです。

寮   みんなが知っているアメリカ民謡を選挙につかったのはなかなかいいアイディア。歌にはこんな使い方もあるんですね。プロパガンダに使えるからこそ、どの方向に使うかが問題。これはほほえましくすてき。