日本のうたごえ全国協議会会長 田中嘉治
2018年11月に開催された日本のうたごえ全国協議会創造委員会の中で、2018年運動70周年から2023年75周年に向かう創造活動について3つの構想が出されました。
①全国創作センターの設立、
②2020年被爆75年にむけたうたごえ作曲家によるオムニバス創作曲の委嘱、
③2023年運動75周年にむけた専門家によるオムニバス作品の委嘱。
これら3つの構想案は、その後の機関で討議決定を経て、現在、「全国創作センター」は全国協議会内に設立され、専門家による委嘱については鋭意準備を進めているところです。
被爆75年となる本年は、核不拡散条約(NPT)発効50周年、無期限延長から25周年、NPT再検討会議&初のニューヨーク原水爆禁止世界大会の開催年、国連創設75周年、さらにヒバクシャ国際署名最終年となる重要な節目の年です。
このような中、あしかけ3年をかけて、このたび被爆75年記念作品として6人のうたごえ作曲家によるオムニバス創作曲集が出版されることになりました。6人は、全国でも作品がよく知られ歌われ、一線での活躍著しいうたごえが誇る作曲家たちです。多忙な日常活動の中を引き受けていただいた齋藤清巳、園田鉄美、高田龍治、高畠賢、藤村記一郎、安広真理の6氏に心から感謝申しあげます。
運動前進の原動力となるのが運動の機関車ともいわれる「創作活動」です。もしも運動に創作活動がなかったならば、人間の苦しみや嘆きを代弁し、時代を捉えて批判の目を研ぎ澄まし、人間味溢れる愛情の目を注ぎながら人間の誇りを胸に憲法のこころと人間の尊厳を機敏にうたう曲を運動はついぞ見出せなかったでしょう。
運動が求める創作曲がいかに命の尊さ、生きる力をストレートに心に届けるか。それが70余年、汲めども尽きぬ源泉なのです。
今日、自衛隊は戦争ができる軍隊にさせられ、米軍基地はさらに拡大されようとし、人権も暮らしもないがしろにされ、金権と汚職にまみれた為政者の暴挙で憲法は蹂躙され、人々の心は虚しく凍てついています。そんな心のすきまにあたたかい風をおくってくれるのが、これら6曲の「風の音符たち」です。
風は地球の呼吸とも言われています。うたごえもまた創立以来、運動が活発に前進できるための呼吸の役割を創作は果たしてきました。
被爆75年を記念して刊行されるこの創作曲集が、うたごえ運動の歴史に新たな一頁を加える季節の風として多くの人々の心に吹き渡り、愛唱されることを心から願うものです。
風に国境なく人を選ばず、歌もまたこれと同じ。